月に登ったうさぎ

 昔、ある深い森に、賢いウサギが住んでいました。ウサギにはサルと山犬とカワウソの三匹の友達がいました。これらの四匹は、お互いに自分の餌を取る場所を決めていて、仲間と餌を奪いあうこともなく仲良く暮らしておりました。そして、ウサギは常日頃皆に

  『困っているものがあれば布施をしなくてはいけないよ』

と言い聞かせていました。そんなある日、天の神の帝釈天が日頃のウサギの行いが誠であるか試そうと、バラモン僧の姿になって、それぞれに食べ物の布施を求めました。

 カワウソはガンジス河で取れた赤魚を、山犬は牛乳と串に刺した肉を、サルはマンゴーの実をバラモン僧に捧げました。ところが、ウサギだけは布施する物が何もありません。そこで己が自身の肉体を施すことにしてバラモン僧に

  『私のからだを火に投じ焼きますから、どうぞそれを召し上がり下さい』

と言って、燃え盛る火にまるで白鳥の様に大きく飛んで、真っ赤な火の中に身を投じました。

 このウサギの真心が本物である事がわかったバラモン僧は、もとの帝釈天の姿になり、ウサギを火から助け上げ、周囲の山々に手を差し出しました。すると不思議なことに、山々は彼の手の締めつけられるまま汁を出しました。彼は、その汁で月の表面にウサギの姿を書きました。

 それ以後、満月にはウサギが月の中で踊っていると言うことです。

 願わくば、このウサギの様に純粋でありたいものです。